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「不相当に高額」な役員退職金の損金不算入の東京高裁判決

投稿者 Bush吉田 2019年07月17日

 最近、事業承継などで先代経営者が退職する相談が多くなっています。
税務実務上、役員退職給与の「不相当に高額な部分」の判断が極めて重要となります。

東京高裁の判決を紹介します。
Ⅹ社はミシン部品等の製造販売業で、年商13億5千万円、資本金4,950万円、H20年10月に死亡した代表取締役A氏への役員退職金4億2,000万円を役員退職慰労規定等に従い株主総会の決議により支給した。その事業年度H21年8月期の役員退職金支給後の課税所得は6,391万円でした。
ちなみに、役員退職金4億2,000万円は、最終月額報酬240万円×勤続年数27年×役員倍数5倍×功労加算1.3倍で算定されています。

三条税務署はH26年7月の税務調査で、役員退職金4億2,000万円のうち、2億1,124万8千円を超える2億875万2千円は「不相当に高額な部分」であり損金として認めない更正処分を行いました。

X社は更正処分に対して、H27年12月に東京地裁に更正処分等の取消しを提訴し、H29年10月に一部取消しを認める判決を受けています。東京地裁の判決は、役員退職金4億2,000万円のうち、3億1,687万2千円までを役員退職給与として認め、更正処分の一部(1億562万2千円)を取り消すという内容でした。

しかし、国はこの第一審の東京地裁判決を不服として控訴し、H30年4月に第二審で東京高等裁判所は一審判決を取り消して国が行った更正処分等を適法とする逆転判決を下しました。
その内容は、功績倍率6.49倍(役員倍率5倍×功労加算1.3倍)により算出した役員退職給与のうち、平均功績倍率3.26倍を超える「不相当に高額な部分」は損金として認めないというものでした。
つまり、A代表取締役への死亡退職金は過去の職務執行の対価として客観的に明らかでなく、同業類似法人の功績倍率の平均値を上回る部分は常に「不相当に高額な部分」として、対価性がなく損金とならないと判示したと云えます。

なお、国側が採用した平均功績倍率3.26倍は、Ⅹ社の近隣の新潟県内の「金属製品製造業」を基幹事業としている同業類似法人から倍半基準(X社の売上金額の半分以上2倍以内)によりサンプリング抽出した5社の功績倍率の平均値から算出されています。
ちなみに、サンプリングされた5社の功績倍率は次の通りです。
法人名  退職給与額    最終報酬月額 功績倍率
 A社  1億2,400万円     80万円      4.31
 B社  1億1,400万円    274万円      3.09
 C社  1億8,000万円    400万円      3.00
 D社  1億3,000万円    120万円      2.13
 E社  1億9,250万円    300万円      3.75
平均功績倍率                3.26

A氏はS42年に事務職として入社、S46年に代表取締役と結婚、S46年に取締役に就任、H15年に代表取締役に就任し、H20年10月に死亡している。その間、8億円以上あった借金をH9年頃に完済、S56年頃は6億8,000万円だった売上高をH15年頃には15億円までに伸ばし、更にH15年には三男を後継者として代表取締役に就任する橋渡しをした功績がありました。

特別な功績があった場合には、これをどのように加味するかが問題となりますが、東京高等裁判所は、功労加算を別途考慮するほど極めて特殊な事情はなかったと認定して功労加算を認めませんでした。
つまり、A氏の水準の功績は、同業類似法人の功績倍率に織込み済みであり、別途評価するほどではないと判断したと云えます。

今後、税務当局の役員退職金の「不相当に高額な部分」について、この判決が重要な判断基準となるのではないかと懸念しています。
つまり、退職役員の同業類似法人の平均功績倍率以上は職務執行の対価以上の贈与的な性格の経済的な利益として損金性が否認される可能性が高くなったからです。
実務上、役員退職金の支給金額について極めて慎重な判断が必要と思われます。

私見ですが問題点として、今回の東京高裁の判決から、
① 納税者側は同業類似法人の功績倍率は税務当局でないと入手できず、税務の安定性に事欠くことになる。TKCデータベースもあるが、その範囲と信頼性に乏しい。
また、過去の判決が同業類似他社の功績倍率をベースに判断しているが、その功績倍率を超えると即、不相当に高額という理論的根拠について納得できない。同業類似法人のサンプルとなった法人のうち、功績倍率が税務当局側の根拠とした3.26倍を上回っている法人、A社4.31倍、E社3.75倍の法人においても3.26倍を超える部分は不相当に高額となるはずである。サンプル法人の功績倍率については適正範囲とならなければその平均値に意味がなく、理論的な自己矛盾に陥っている。
また、同業類似法人の功績倍率の抽出の仕方で結果が異なるため、当局側でなく中立な第三者機関で担当すべきである。恣意性の排除のためにもそのような仕組みが必要と思われる。

② カルロスゴーン事件でも明らかなように国際的に役員の報酬水準は高額化している。
4億2,000万円は上場会社に比べ不相当に高額とは思えない。法人税34条2項、法人税法施行令70条2号は同族会社だけでなく、上場会社も含まれると解釈される。上場会社において10億円以上の支給事実もあるが、否認されたニュースはない。
税務上、上場会社と同族会社に適用に公平で差はないと信じたい。

③ 会社法の制定で、法人税法は平成18年改正で役員退職給与は損金経理要件が撤廃され、役員退職金であれば労務対価の後払いとして損金として認めていると解釈されている。その改正から、課税当局は役員退職金等に対して慎重な課税を行っているように思われる。したがって、X社の税務調査も役員退職金支給年度(H21年8月期)の税務調査に基づく更正等がH26年7月と5年渡過する更正期限H28年10月20日(H26年8月期の申告期限まで)ギリギリまで引き伸ばされたと思います。このように遅い税務調査は納税者X社には延滞税など、大変気の毒な結果を招きました。
本件更正等における権利の濫用、信義則違反の有無についても争点になっています。

④ 日本は民主主義国家である、会社の経営は私的自治によって運営されている。このように税務当局から不相当に高額として否認するには、租税回避を意図したものでもない限り、国家権力の濫用ではないかと思われる。


参考条文
法人税法34条2項
法人税施行規則70条2項
国税通則法65条4項
憲法84条租税法律主義

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2018年分の確定申告の特徴は。

投稿者 Bush吉田 2019年03月18日

 久しぶりのブログです。
確定申告がやっと終わり、最終日は毎年恒例の打ち上げを行いました。

 さて、その2018年分確定申告ですが、今年は12月決算(2月末申告期限の法人)が増加し、確定申告の出足がいつになく遅く、3月に入っても進捗率がまだ30%というありさまでした。
こんな状況で3月15日までにやり切れるのだろうか?と、とても心配でした。

さらに、そんな状況に追い打ちを掛けるように今年の申告内容は土地建物の譲渡等の複雑な案件が多く、大変な年でした。
 
当事務所は、申告書の作成については各監査担当者とその補助スタッフで行い、その原案をマネージャークラス以上の者が第一次審査をし、さらに有資格者が最終審査を行います。
あまりの忙しさに審査の途中、過労?で鼻血を出したり(笑)、同じく過労のあまり高血圧に悩まされたり、とトラブルも続出しました。
そんな状況でしたが、申告期限である15日までに何とか完結することができたのは、事務所全員が一丸となって頑張ってくれたお陰だと思います。
毎年のことながら事務所のみなさんの協力に本当に感謝しています。

 今年の確定申告の特徴や感想を書きますと、
土地建物の譲渡について、相続で取得した相続人が使用する予定のない不動産を、申告期限後3年以内に譲渡しているケースが多くありました。
相続で取得しているため、先代が取得した価格が分からないものも多く、先代の購入時の売買契約書など資料集めにずいぶんと手間が掛かりました。
もちろん、相続申告期限から3年以内の譲渡ですので、その譲渡した相続財産の相続税相当額は取得費加算として譲渡所得計算上の特例が使えます。

譲渡価格に着目すると、相続時の評価である路線価等に対して、売却価格はかなり高い水準でしたが、長い間売りに出して売主が納得する良い条件で売却できたようです。
また、居住用の特例措置などの適用を受けた譲渡が多くありました。
さらに、収用等の買換え特例や、所得税法上の交換などいろいろな不動産の譲渡取引がありました。
譲渡損失となる案件は数件でしたがその大多数が譲渡益となる取引でした。

昨今、首都圏の不動産市場は好調で、地価も上昇気味です。
購入資金の借入もし易い金融環境でした。
しかし、このところ世界経済の見通しも不透明ですし、スルガ銀行の不正融資やレオパレスの違法建築は不動産取引への警鐘を鳴らすものです。

経済不安や不祥事は不動産市場にブレーキを掛けるかもしれません。

何はともあれ、今年も確定申告を終えることができ、まずはホッとしております。

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