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新事業承継税制

背景

事業承継者の相続税の負担の問題は、現経営者が廃業を検討する要因となるのみならず、会社からのキャッシュの流出、事業拡大の抑制や利益圧縮等の要因となっており、その減免によって、事業の継続・発展を通じた雇用の確保や経済活性化を図ることが極めて重要です。

 また、近年、欧米では事業承継税制が政策税制として強化されアジアでは相続税自体存在しない国も多い中、広義のグローバル競争に晒されている中小企業の事業継続・発展によって技術継承や競争力確保を図るといった観点からも事業承継税制の改革は重要です。

 これらの視点を踏まえ、「中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律(仮称)」の制定を踏まえ、平成21年度税制改正において、事業の後継者を対象とした 『取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度』を創設することとなりました。

 この新しい事業承継税制の制度化にあわせて、相続税の課税方式をいわゆる『遺産取得課税方式』(別紙参照)に改めることを検討することになりました。

 その際、格差の固定化の防止、老後扶養の社会化への対処等相続税を巡る今日的課題を踏まえ、相続税の総合的見直しを検討することになりました。

2.制度のあらまし

中小企業基本法における中小企業の定義

  資本金  または 従業員数
製造業その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 100人以下

(1)概要

 事業承継相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等を取得しその会社を経営していく場合には、その事業承継相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した議決権株式等(相続開始前から既に保有していた議決権株式等を含めて、その会社の発行済議決権株式の総数等の3分の2に達するまでの部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予する。

イ 事業承継相続人とは・・
 「中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律」における経済産業大臣の認定を受けた一定の中小企業の発行済株式等について、同族関係者と合わせその過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中で筆頭株主である後継者をいう。

①相続等により、既に保有していた株式と合わせて単独で過半数を保有することとなる場合。

②相続等により、同族関係者と合わせて過半数を保有し、かつ、親族内で筆頭株主となる場合。

ロ 被相続人
 会社を経営していた被相続人は、その会社の発行済株式等について、同族関係者と合わせその過半数を保有し、かつ、その同族関係者(事業承継相続人を除く。)の中で筆頭株主であったことを要する。

(2)事業承継要件等

イ 事業承継相続人は相続直後に代表者であること
ロ 相続開始後5年間の事業継続
ハ 経済産業大臣の確認時の雇用者の80%以上を5年間維持すること

(3)納税猶予税額の免除

 事業承継相続人がその株式等を死亡のときまで保有し続けた場合その一定の場合

(4)納税猶予税額の一部納付

 相続税の法定申告期限から5年の期間経過後において、納税猶予の対象となった株式等を譲渡等した場合には、その時点で、納税猶予の対象となった株式の総数等に対する譲渡株式の総数等の割合に応じた猶予税額を納付する。

(5)納税猶予税額の全額納付

 事業承継相続人が、相続税の法定申告期限から5年の間に代表者でなくなる等により、中小企業の事業の永続の円滑化に関する法律に基づき経済産業大臣の認定が取り消された場合には、猶予税額の全額を納付する。

(6)利子税の納付

 上記(4)(5)により、猶予税額の全額又は一部を納付する場合には、その納付税額について相続税の法定申告期限からの利子税も合わせて納付する。

(7)担保提供

 この特例の適用を受けるためには、原則として、納税猶予の対象となった株式等のすべてを担保に供しなければならない。

(8)租税回避行為防止

 個人資産の管理等を行う法人の利用等による租税回避行為を防止する措置を講ずる。

(9)適用関係

中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律の施行日(予定:20年10月1日)以後に開始した相続等から適用を可能とする措置その他所要の措置を講ずる。

(10)現行の特定同族会社株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例は、
所要の経過を講じた上で廃止

(11)納税猶予税額の計算

 納税猶予の対象となる株式等のみを相続するとした場合の相続税額から、その株式等の金額の20%に相当する金額の株式等のみを相続するとした場合の相続税額を控除した額を猶予税額とする。

イ 発行済議決権株式総数×2/3×1株当り評価額=課税対象額
ロ 課税対象額×相続税の税率=相続税額
ハ 相続税額−課税対象額×20%×相続税の税率(税額)=納税猶予額

〜参考〜 中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律案

※(イメージ)(中小企業庁)

目的

雇用を支え、わが国経済の基盤である中小企業について、事業の円滑な継続を支援する。

課題

  1. 民法上の遺留分による制約(非後継者からの遺留分減殺請求による経営の不安定化)
  2. 資金需要(代表交代直後の信用不安が生じる中で散逸した株式や事業用資産の買取りに係る資金需要が発生)
  3. 自社株式等に係る相続税負担(後継者が相続した自社株式等に係る多額の相続税負担の発生)

1.民法の特例

◆先代経営者の生前に、一定の要件について経済産業大臣から確認を受けた「後継者」が遺留分(※)権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、下記の民法の特例をうけることができる。
(※)遺留分とは、配偶者や子供に保証された最低限の資産承継の権利であり、原則法定相続分の半分

 

①により、事業継続に不可欠な自社株式等に係る遺留分減殺請求を未然防止
②により、後継者が株式価値上昇分を保持できるため、経営意欲の阻害要因を廃除できる。

2.金融支援

◆中小企業やその後継者が事業の円滑な継続のために必要とする資金を支援するための特例を創設
     ↓↓↓

  • 中小企業信用保険法の特例
  • 日本政策金融公庫法の特例

3.課税の特例(詳細は上記に記載済)

◆中小企業の後継者が、相続又は遺贈により自社株式等を取得後5年間、雇用確保を含む事業承継を行う場合に課税の特例の適用がある旨を規定。

◆当該後継者は、5年間、事業継続の状況を経済産業大臣に報告。
     ↓↓↓

租税特別措置法
◇相続税の80%以上の減額など具体的な税制措置について規定。
◇事業継続要件を満たさなかった場合には減額された相続税を納税する旨規定。

株式に対応する相続税額の80%納税猶予フローチャート

相続税の課税方式

課税方式 現行制度
(法定相続分課税方式)
遺産取得課税方式
(改正後)
概要 遺産取得課税方式を基本として、相続税の総額を法定相続人の数と法定相続分によって算出し、それを各人の取得財産額に応じ按分して課税する方式 相続等により遺産を取得した者を納税義務者として、その者が取得した遺産を課税物件として課税する方式
考え方 ①累進税率の緩和を企図した仮装分割への対応

②農業や中小企業の資産等分割が困難な資産の相続への配慮
といった観点から、実際の遺産分割の状況により負担に大幅な差異が生じることを防止するという考え方
偶然の理由による富の増加に担税力を見出して相続人に課税することにより、富の集中の抑制を図るという考え方
留意点 ①自己が取得した財産だけでなく、他の相続人が取得した全ての財産を把握しなければ正確な税額の計算・申告ができない。したがって、
相続人の1人の申告漏れにより他の共同相続人にも追徴税額が発生する。

②相続により取得した財産の額が同額であっても法定相続人の数によって税額が異なる。

③現行の居住や事業の継続に配慮した課税価格の減額措置により、居住等の継続に無関係な他の共同相続人の税負担まで緩和される。
①自己が取得した財産だけで、正確な税額の計算・申告ができる。
したがって、相続人の1人の申告漏れにより他の共同相続人に追徴税額が発生することはない。

②法定相続人の数に関係なく、同額の遺産を取得した者には、同額の税負担となる(各々の担税力に応じた課税をすることができる)。

③課税価格の減額措置は、居住等を継続する者のみに減額効果が及び、他の相続人の税負担は、軽減されない。
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