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業績悪化の対応

<業績が急速に悪化した中小企業の対応策について>



1.税制による赤字企業の救済制度?

 平成21年度の税制改正により、欠損金の繰戻し還付制度が復活しました。この制 度の復活は深刻な不況により、前期決算が黒字でも業績が急速に悪化し当期決算が 赤字となる法人にとって、法人税の還付が受けられるので朗報といえます。(平成 21年2月1日以後に終了する各事業年度から適用)

 欠損金の繰戻還付制度は前期が黒字、当期が赤字となった法人が、前期の所得と 当期の欠損金を相殺すると前期所得が減るので、前期に納付した法人税の一部を取 戻すことができる制度です。これは当期の赤字企業にとって資金繰り上、有効な制 度であると思われます。

(※2)「還付所得事業年度の法人税額」とは
・還付所得事業年度で法人税額から控除された所得税額がある場合には、その所得税額を控除する前の金額となります。
・土地の譲渡等があった場合の特別控除額は含まれません。
(※3)「欠損事業年度の欠損金額」は税務上の金額であり、還付所得事業年度の所得金額を限度とします。

2.経営の合理化と新市場の開拓が必須

 多くの中小企業は来期の業績は過去に経験が無いほど厳しい状況になると予想しています。

 これは金融危機を発端にした「100年に1度」といわれる世界的な不況及び円高に より大手自動車、電機メーカー等の輸出企業の業績が急速に悪化したことに伴い、 中小下請け企業の受注が大幅に落込んでいるからです。既に多くの中小企業は売上 の激減で固定費の削減が追いつかないため、大幅に利益が圧迫されています。

 しかし、この異常事態に対し、大手メーカーは極めて早期に対策を講じています。 この対策は主に在庫調整と資産売却によるキャッシュフローの改善です。

 製品が売れなければ在庫が増えて資金を圧迫しますが、無理に売ろうとすれば値 崩れが生じてさらに資金を圧迫するという悪循環に陥ります。そのため、生産稼働 率の引下げや工場を閉鎖して在庫を減らしています。

 在庫調整による大幅な減産は①従業員の解雇や賃金カット、②設備投資の縮小廃 止等に繋がります。特に製造業における派遣社員の「派遣切り」は雇用情勢が不安 定になり社会問題になっていますが、一方、企業側からすれば何としても業績とキ ャッシュフローの悪化は抑えなければならず固定費の削減は必要不可欠となります。

 また、財務面では①売上に貢献しない不動産や有価証券等の売却、②株安により 直接金融から銀行借入による資金調達を余儀なくされています。

 この不況は大手企業といえどもさらに資本効率を高め、財務体質を強化し、合併 等の組織再編により業界シェアを確保しないと生き残りが難しくなると思われます。

 したがって、もともと財務体質の脆弱な中小企業(特に下請け企業)はよりいっそう、経営の合理化と新市場に向けた業態変化がないと、この不況を乗りきること が難しくなります。

3.経営計画の策定

 経営の合理化は経営の無駄を省き、経営効率を高めることほかなりません。経営 の無駄は経営資源を有効に活用できない場合に生じます。すなわち、会社が蓄積し たノウハウが売上として実現していない場合、人材を適材適所に配置していない場 合、会社の設備が有効利用されていない場合等は人、モノ、カネが有効に活用され ていないことになり経営資源を無駄づかいしていることになります。

 そこで、経営の合理化をするにはまず経営計画の策定が必要です。そして経営計 画は会社の経営理念にもとづいたものでなくてはなりません。計画を策定すること ではじめて会社の問題点等が見えてくるからです。「経営計画を立ててもどうせそ の通りにならないから無駄。」といって経営計画を全く立てない経営者がいますが、 これでは会社のやりたいことが明確になりませんし、業績の見通しもたたないので 資金繰りのメドも立ちません。

 また、経営計画がなければこの不況下で銀行に融資を申込んでも恐らく会社の先 行きが予想できないので融資を引き受けてくれないでしょう。したがって、経営を 合理化し、会社が成長できるために何をすべきかを経営計画に織込むことが重要で す。

 経営計画の作成手順として、まず中長期経営計画を策定し短期計画を詳細に練り 上げることになります。この場合、経営計画は経営合理化の設計図であり、企業活 動の目標となるものですから、数字は「絵に描いた餅」にならないように根拠付け をしなければなりません。

(1)具体的な策定手順等
 ① 現状認識及び分析
   まず、現状の売上・変動費・固定費等をベースに今後の業績や資金繰りを予 想します。
 ② 経営目標の数値化
   次に、経営理念にもとづいた全社的な経営目標を具体的に数値化します。
 ③ 予算決め・実行・予算差異の分析
   現状の予想では経営目標を達成できないとみられる場合、目標を達成すため の売上、変動費、固定費を設定して全体予算を組み、これを各部門に落とし込 み、具体的に実行しなければなりません。また、常に予算と実績を比較し、目 標達成度合いを検証します。例えば予算よりも固定費が削減されていなければ 部門毎にその原因を特定し、改善しなければなりません。
 ④ 計画の手直し
   また、計画を策定する場合には例えば、実行性の高い計画をケース1とし最 も実行が難しい計画をケース5として、段階的に目標利益が達成できるような 計画とすれば、現実的に何をどこまですればよいかが理解できます。さらに、 計画が実行不能となれば、常に別の策を講じなければなりません。
 ⑤ 項目別の経費削減対策
  イ.材料・部品・外注費等の単価を引下げ、限界利益を確保するため、仕入、外注先を選別します。

ロ.設備投資計画等の見直し。売上に直ちに貢献しない設備投資は延期、中止を検討する必要があります。

ハ.売上に応じた適正在庫を把握し、過剰在庫は減らす必要があります。(在庫調整)

ニ.販売費・一般管理費で不必要な支出は極力削減します。(稟議による決済金額の下限を引下げる)

ホ.資産(固定資産、有価証券、ゴルフ会員権等)の売却。売上に貢献しない資産は換金し、スリム化を図ります

へ.人は会社の重要財産なので、安易な賃金カットは従業員のモチベーションを下げるので好ましくありません。
  しかし、在庫調整による事業規模の縮小過程で労働分配率が適正値を超える場合、人員整理や賃金カットは
  必要になる場合があります。

 一方、雇用調助成金等を利用することで人件費負担を抑えることも検討の余地があります。

 以上の経営計画の策定は、あらゆる事態を想定し、複数のプランを作り、ケース・バイ・ケースで対応できるようにしておく必要があります。

 現在の経営環境では、経営目標を全社員が危機感をもって認識すること、直ちに実行に移すことが非常に重要です。何もしないと手遅れになってします。
(2)経営計画は“景気回復期の予想”も必要
  永遠に不況が続くことは考えられず、いつか必ず景気はよくなります。過去を見 ると各企業の在庫調整が進めば、市場の需給バランスがとれてくるので景気が回復 基調となり、大手製造企業は一気に増産に転じます。

 景気が回復すると中小下請け企業の受注も大幅に増加しますが、人手と運転資金 が不足することがあります。このため、経営計画では景気回復期の状況を予測し、 人材確保や資金手当について考慮しておくことも必要です。
  以上
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